生物多様性と漁業

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エリトリアのアヴィフォーナ

エリトリアの国土は北海道と九州を合わせた程度の面積ですが,地形と気候は非常に多様性に富んでいます。島嶼部を含めれば1350㎞以上にも及ぶ海岸線を有する一方で,緑豊かな森林地帯や乾燥した低地もあります。さらに,海抜3018mの国の最高峰のアンバソイラ山から,海面下116mにあるダナキル低地のコーバー窪地まで,高低差に富む国土でもあります。

こういった国土的特徴のため,エリトリアのアヴィフォーナ(鳥類相 : 特定地域に集まる鳥類のこと)は非常に独特で魅力的です。エリトリア国内で記録された鳥は600種近くとなります。アヴィフォーナの大部分は南のエチオピアや西のスーダンなど隣接する国々とも共通しますが,エリトリア・エチオピア地域に固有の鳥も30種類を数えます。沿岸部・島嶼部へ行けば海鳥や渉禽類が地面を覆い尽くさんばかりに営巣し,森林へ行けば色鮮やかな鳥たちが目を楽しませてくれます。乾燥した土地にも,過酷な環境に適応した鳥たちの姿があります。色・形だけでなく,日本では見られないような変わった習性の鳥もいます。
では,鳥たちを種類別に,見ていくことにしましょう。

Agro-ecological Zones of Eritrea

source : FAO, 1997. Support to Forestry and Wildlife Sub-sector, Pre-investment Study TCP/ERI/6712 (F), Volume I & II, FAO, ROM, Italy.

 

スズメ目

スズメ目とは,簡単に言えば,日本でもよく見るスズメを含むグループです。10000種を超える世界中の鳥のうち,半数以上はスズメ目に分類されるほどです。*三前趾足と呼ばれる趾の形,発達した*鳴管が発達しているのが特徴で,よく囀ります。一部の例外を除いて小型の鳥です。
スズメ目は南極大陸をのぞくすべての陸地に生息しており,もちろんエリトリアにもいます。私たちが見て「小鳥」だと思う鳥は,多くの場合スズメ目です。ただし,スズメ目はあまりにも種類が多く,私たちが知る日本のスズメとはだいぶ趣が違うものも少なくありません。いくつか特徴的なものを紹介しましょう。
* 三前趾足(さんぜんしそく) : 4本ある趾(あしゆび)のうち3本が前を向いている形。
* 鳴管(めいかん) : 鳴くための器官。脊椎動物は声を出すのに声帯を用いるが,鳥類のみは鳴管を用います。鳴管は気管の分岐点に位置します。


三前趾足

タイヨウチョウの仲間

エリトリアの森林では,小型の鳥がホバリング(停空飛翔)して花の蜜を吸うのを見ることがあります。その姿を見るとハチドリだと早とちりしてしまいそうですが,ハチドリは南北アメリカ大陸に分布するアマツバメ目の鳥で,アフリカには生息していません。アフリカ大陸で蜜を吸う鳥はスズメ目のタイヨウチョウです。ハチドリと同様,チューブのような構造の舌を持ち,その先端はブラシ状になっています。ハチドリは足が退化しており,歩くのがきわめて苦手ですが,タイヨウチョウは歩くのも木の枝にとまるのも苦にしません。タイヨウチョウはハチドリのようにホバリングする場合もありますが,強い足で枝につかんだ姿勢で蜜を吸うことも多いようです。
タイヨウチョウという名前は,日の当たる角度によって色が変化して見えることに由来します。いわゆる構造色というものです。よって,実際に見ると写真とは違う色に見えるかもしれません。


ウツクシオナガタイヨウチョウ

カワリタイヨウチョウ



ルビアオナガタイヨウチョウ



ハタオリの仲間

スズメ目の中のハタオリ科の鳥です。ハタオリの仲間は,草などを巧みに編み,木の枝からぶら下がる球形・とっくり状の巣を作ります。アフリカ大陸のハタオリと言えば,南アフリカ ・ボツワナ・ナミビアに分布し,巨大なコロニーを作るシャカイハタオリが有名ですが,エリトリアにもハタオリの仲間が何種かいます。

ミミグロハタオリ

アカハシウシツツキ

名前が示す通り,赤い嘴で牛などの家畜をつつきます。家畜についたダニ・ノミ・シラミなどの寄生虫を食べています。


アカハシウシツツキ

キタキンランチョウ

英語名をNorthern Red Bishopと言います。bishopは司教の意味で,雄の羽毛の色がローマ=カソリックの司教が着る法衣を思わせることから命名されました。



キタキンランチョウ

その他のスズメ目


セイキムクドリ




コシジロヤブチメドリ




コシジロイソヒヨドリ



ブッポウソウ目

ブッポウソウは漢字で仏法僧と書きます。コノハズクの鳴き声が「ブッ・ポウ・ソウ」と聞こえ,昔の日本人はこの鳴き声の主を羽毛の美しい鳥だと勘違いし,ブッポウソウという名前をつけたのです。
この鳥の仲間は英語名ではRollerといい,世界中に分布し,アフリカにもいます。ディスプレイ(求愛や威嚇行為)の時に派手に回転・旋回することから,Rollerの名前がつきました。


オナガニシブッポウソウ




ニシブッポウソウ




ルリムネハチクイ



ハト目とサケイ目

ハトも日本では馴染み深い鳥ですが,その仲間は世界中に分布しています。「鳩胸」という言葉の元になった発達した胸筋,ずんぐりした体型を一目見れば,ハトの仲間だと分かります。エリトリアには,鳴き声が人の笑い声を思わせるワライバト,イチジクの実を好物とするキバラアオバトなどがいます。


ワライバト




キバラアオバト



また,乾燥地帯に適応したクロビタイサケイという鳥がいます。体型を見るとハトに似ており,かつてはハト目として分類されていましたが,現在ではサケイ目として分類されています(鳥の分類は流動的です)。水に羽毛の間に溜めることができ,数キロ離れた巣に持って帰って雛に与えます。


クロビタイサケイ



渉禽類

渉禽類は「生物多様性」のページでも紹介しましたが,新しい写真が来たので何種類かご紹介しましょう。海岸沿いには,古代エジプトで神の化身とされたアフリカクロトキ,カニを食べるカニチドリなど個性的な鳥が多くいます。


アフリカクロトキ




カニチドリ



固有種,国鳥

エリトリア・エチオピアに固有種である鳥は30種類を数えます。その大半は,高地に住む鳥です。下の写真のアビシニアクイナ,イボトキはどちらも高地で見ることができます。


アビシニアクイナ




イボトキ



最後にエリトリアの国鳥を紹介しましょう。
エボシドリの仲間はアフリカ大陸にしかいません。頭部の羽(冠羽)が長く伸びているのが特徴です。この冠羽が烏帽子のように見えることから,エボシドリという和名がつきました。エボシドリの仲間でエリトリアにいるのは,ホオジロエボシドリです。冠羽の他,頬のあたりの白い羽毛が特徴的です。
駐日エリトリア大使館のウエブサイトや広報グッズにも,公式キャラクターとしてホオジロエボシドリが登場します。ぜひ,ご注目ください。


ホオジロエボシドリ


 

エリトリア・エチオピアの固有種鳥類に興味がある方には以下の書籍がおすすめです。
Jose Luis Vivero Pol, “A guide to Endemic Birds of Ethiopea and Eritrea” : Shama Books, 2001


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