エリトリアのHIV/エイズに関する取り組み

国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、東南部アフリカは、最も多くのエイズ感染の影響を受けた地域であり、この地域計10カ国で世界のHIV /エイズ患者の34%を占めると言われています[1]。これら厳しい数値が示す通り、HIV/エイズはアフリカの最も重要な公衆衛生上の課題の一つであり続け[2]ていますが、一方で著しい進歩もみられます。たとえば、2001以前には、アフリカではHIV/エイズ治療はほぼ存在していませんでした。しかし2012年までに、約750万アフリカ人が抗レトロウイルス療法(ART)を受けるまでになりました。同様に、2013年に発表されたUNAIDSの報告書では、感染が減少し続けており、ことに子供の新感染者数が急激に減少[3]していることが明らかにされました。[4]

そして、エイズ/HIVとの闘いにおいて、驚異的な記録を持つアフリカの国の一つがエリトリアです。アフリカの角に位置するエリトリアは、HIV/エイズやマラリア、その他の関連疾病と戦う国連のミレニアム開発目標を順調に達成しています[5]。さらに、エリトリアの数字は、この地域内で見ても、大陸全体で見ても、特質とした存在として区別されます。(表1参照)。しかし、ひどい人的被害や国の発展の阻害といったHIV/エイズがもたらす可能性のある壊滅的な結果を考えれば、エリトリアが自己満足している余地はほとんどないでしょう。むしろ国は、現行のプログラムを増補し、HIV/エイズの有害な影響を制御し、減少させるための効果的な取り組みと介入を促進し続ける必要があります。

エリトリアでHIVが初めて確認されたのは独立闘争末期の1988年にさかのぼります (Muller 2005)[6]。その後の数年間は、感染者数が絶え間なく増加し2000年になるまでには、5歳以上の患者の死亡理由において、HIV/エイズが2番目に主要な死因になりました。[7]

この期間中、有病率は2.0%となり、約30,000人のエリトリア人が感染しており、毎年1900人の新規感染が出ました(UNAIDS 2013)[8]。この数値は、アフリカの他の国と比較して「比較的低い」という評価ではありましたが、その状況は国連合同エイズ計画(UNAIDS)がエリトリアに「今後数年以内にHIV/エイズの蔓延の急激な拡大に直面する」と警告するに十分なほど深刻であったといえます。[9] しかし、悲惨な予測とは裏腹に、エリトリアにおいて現在有病率は約0.6%(WHO 2011)[10]であり、これはアフリカで最も低い国のひとつであり、年間の新規感染者は500人以下を記録しています(UNAIDS 2013)。エリトリアの功績を検証すると、彼らが多くの課題に直面したにもかかわらず、幅広い努力をした結果であることがわかります。

エリトリアでは、本来ならばHIV/エイズの危険因子を増大させてしまうことのある伝統的な家父長制的な固定観念や実践が、成功の要因となっていることは注目に値します。たとえば、近隣地域のいくつかの国では、低年齢での結婚がいまだに非常に一般的です。そして、これらは子どもの権利問題を代表しているだけでなく、この慣習がいくつかのメカニズムを介して、HIV/エイズの感染率を高めている可能性が考えられています。[11] そこで、注目するべきであるのは、エリトリアが18歳未満の子どもおよび青年の結婚を違法としている[12]ということです。その結果として、HIV/AIDS感染の潜在的な危険因子が回避されているということが考えられます。

また同様に、アフリカと中東の一部で見られる痛々しい伝統的慣行である女性性器切除(FGM)[13]については、エリトリアでは独立前から廃止への努力が続けられてきましたが[15]、2007年には非合法化されています。[14] 児童婚と同じように、FGMは女性や子供、人権の問題であるだけでなく、HIV/エイズの感染危険性を高めることに繋がります。[16]  エリトリアは、都市部、農村部の双方において、廃止だけでなく、支援、啓蒙、教育、予防、および回復プログラムに取り組んできました。[17] その結果、FGMの有病率は減少し、女性と子どもの権利はより保護されるようになり、HIV/エイズのための潜在的な危険因子は防がれてきました。[18]

最後に、男女平等は潜在的に、HIV/エイズとの戦いにおいて継続的な成果をもたらすための基盤であり続け、国の優先課題となっています。 WHOのような権威的立場でさえ,ジェンダー差別と暴力によって女性がもっと感染しやすくなると主張してきました。[19] 「なかでも、貧困は人びとの自己防衛の選択肢を制限し、人びとをリスクが高い環境に追いやる」[20]ために、貧困の女性化が、女性がHIV/エイズに感染する危険度を高めているのです。男女平等の改善を通じ、HIV/エイズの主要な促進力がコントロールされます、というのも、女性が直面しているHIV予防や治療、ケアサービスへのアクセスが改善され、金銭的不自由や移動の制限、不平等な育児責任などが改善されるからです。[21]

男女平等を改善し、女性による貧困の負担を減少させるエリトリアの試みは、次のとおりです。女子差別撤廃条約(CEDAW1979)[22]など、いくつかの関連する国際人権文書を批准しました。男女平等を国の教育方針や貧困削減制作の基本要素にし[23]、社会における女性の平等な地位を確保するための動労および土地改革法を策定し、エリトリア女性連合(NUEW)と緊密に協力し、社会のあらゆる場面で男女平等のプログラムや政策をコーディネートし、モニターし、実施しています。[24]

男女平等を達成すまで、まだ課題は残るものの、全ての努力はHIV/エイズとの戦い、女性の地位確立の両者のために、行われています。

国のHIV/エイズ対策に貢献する幅広い社会的·、法的要因に加え、エリトリア国民の公衆衛生対策は非常に有効であることが証明されています。対応に成功してきた他の国々と同様に、イサイアス大統領ら国のトップレベルも対策に関わってきています。大統領は、「地球からこれらの病気が絶滅するように戦わなくてはならない。そして、今がまさにそのときである」と述べています。[25]

エリトリアの保健省(MOH)は国の対策の中心となっています。具体的には、予防活動についてのガイドライン、治療とケア、および権利、HIV/エイズとともに生きる人々の尊厳を確保する条項を定める国のHIV/AIDSに対する方針を確立させました。この政策の注目すべき、目に見える成果は、HIV/エイズ、マラリア、性感染症(性感染症)、結核に起因する経済的、社会的、健康負担を軽減を目的としたHAMSET計画の実践に見て取れます。プログラムの主な特徴は、データ収集、アップグレード資源、施設の拡大および強化や改善、健康管理体制などがあります(Muller 2005)。


Source: WHO and UNAIDS26

著者 Fikrejesus Amahazion(fikrejesus87@gmail.com)
エリトリア・アスマラで生まれ。聖ボナベンチャー大学(米国ニューヨーク州)へのスポーツ奨学金を受けて、カナダに移住。首席で卒業し、国際マーケティングおよびスペイン語を専攻し社会学学士号取得。現在、エモリー大学(ジョージア州アトランタ)で社会学博士論文提出志願者。主な研究領域は、人権、人身売買、開発、および比較政治経済学。

 

注釈
[1]  {LINK}
[2]  {LINK}
[3]  {LINK}
[4]  {LINK}
[5]  a) {LINK} and b) {LINK}
[6]  Muller, T. 2005. “Responding to HIV/AIDS Epidemic: Lessons from the Case of Eritrea.” Progress in Development Studies. 5: 199-214.
[7]  {LINK}
[8]  UNAIDS Report on the Global AIDS Epidemic. 2013. Avialable at: {LINK}
[9]  {LINK}
[10]  {LINK}
[11]  a) Laga, M., B. Schwartlander, E. Pisani, P. Sow, and M. Carael. 2001. “To Stem HIV in Africa, Prevent Transmission to Young Women.” AIDS. 15: 931-934.
b) Bruce, J. 2007. “Child Marriage in the Context of the HIV Epidemic.” Population Council. September (11): 1-4.
[12]  {LINK}
[13]  Coming to a consensus on how to refer to the practice has been a challenge. At various times, the practice has been referred to as: a) female genital cutting; b) female genital circumcision; c) or female genital mutilation. Here I use female genital mutilation as that is the term utilized by the World Health Organization {LINK} . At different times, Eritrea has referred to the term as female genital mutilation or cutting.
[14]  Proclamation 158/2007: A Proclamation to Abolish Female Circumcision. Available at: {LINK}
[15]  a) EPLF initiatives: {LINK} b) pre-2007 initiatives: {LINK} c) also see: Keneally, T. 1990. To Asmara: A Novel of Africa. London: Grand Central Publishing.
[16]  a) Brady, M. 1999. “Female Genital Mutilation: Complications and Risk of HIV Transmission.” AIDS Patient Care and STDs. 13 (12): 709-716.
b) UNFPA. 2013. “Promoting Gender Equality: Female Genital Mutilation/Cutting.”UNFPA: Population Issues. Available at: {LINK}
c) Yount, K. and B. Abraham. 2007. “Female Genital Cutting and HIV/AIDS among Kenyan Women.” Studies in Family Planning. 38(2): 73-88.
[17]  {LINK}
[18]  {LINK}
[19]  WHO. 2000. “Violence Against Women and HIV/AIDS: Setting the Research Agenda.” Gender and Women’s Health Meeting Report. 23-25 October 2000. Geneva, Switzerland.
[20]  Irwin, A., J. Millen, and D. Fallows. 2001. Global AIDS: Myths and Facts – Tools for Fighting the Global AIDS Epidemic. Cambridge, MA: South End Press.
[21]  {LINK}
[22]  a) {LINK} and b) {LINK}
[23]  {LINK}
[24]  {LINK}
[25]  {LINK}

     

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