音楽

エリトリアの音楽

エリトリアの人々はとても音楽が好きな国民です。伝統的にも、9つの民族それぞれが独自の音楽やダンスを持ち、フェスティバルではさまざまな民族の歌や踊りが一同に披露され人気を集めています。また現代の生活においても、街角のミュージックストアには伝統音楽から現代のエリトリア音楽までのさまざまなCDがならび、Helen MelesやBereket Mengisteabなどの歌姫や、Elsa Kidane Wedi Sheikなど、多くの歌手が活躍しています。最近では、アスマラ・オールスターズの『エリトリア・ガット・ソウル』のCDが日本でも発売されるなど、少しずつ知られてきています。


伝説のエリトリア人サックス奏者

1960〜70年代に活躍したエリトリア系アメリカ人サックス奏者でエリトリア・エチオピア現代音楽の立役者でもあるテスファマリアム・キダネの魅力を、ビニアム・テクレ氏の作品レビューで紹介します。

A Great Musical Come back:
Lifetime's Journey for an Eritrean Saxophonist

アメリカ・ワシントンDCを拠点に30年も活躍してきたエリトリア系アメリカ人、テスファマリアム・キダネ(Tesfamariam Kidane)が新たなミッションに乗り出しました。

テスファマリアムは60年代から70年代初頭、そして現在も活躍するエリトリア人サックス奏者であり、エリトリアの首都アスマラとエチオピアの首都アディスアベバにおける現代音楽のパイオニアです。

テスファマリアムはエリトリア人アーティストでありながらエチオピア現代音楽の立役者でもあります。同世代に活躍した音楽家として、サックス/ベースギタリストのフェカドゥ・アンデメスケル(Fekaddu Andemeskel)、リードギタリストのテクレ・アドハノム(Tekle Adhanom)、同じくリードギタリスト/ヴォーカリストのテウォルド・レダ(Tewolde Reda)、作曲家のアブカカール・アシャカー(クブル・ゼベグナ・バンド)、アブカクル・アシャカー(Abukakr Ashaker(クブル・ゼベグナ・バンド))、作曲家/教師のギルマイ・ハドゥグ大佐(Colonel Girmay Hadgu(クブル・ゼベグナ・バンド))とヴォーカリスト/パーカッショニストのテクレ・テフファジギ(Tekle Tesfazghi)、創造的かつ独創的なギタリスト、セラム・セイヨム(Selam Seyoum)によって率いられたエリトリア人グループ、ザ・ロハバンド(the Roha band)があります。

カニュー米軍基地がエリトリア人にアメリカンポップの流行をもたらす前に、テスファマリアムは50年代後半にセンベルに司令部があるエリトリア警察音楽隊に入隊しました。エリトリア警察音楽隊は、エリトリア国内ではその種で最初のものでした。

60年代中頃、テスファマリアムはエチオピアに拠点を移し、当時の著名な音楽家と共演しました。60年代中頃から1974年にかけてエチオピアの首都アディスアベバは現代音楽の絶頂期にありました。それはテスファマリアムが自身の技術に磨きをかけ、街で最も人気のサックス奏者の一人となった時期でもありました。テスファマリアムは1972年にエチオピアからアメリカに渡るまでに、エチオピア音楽の象徴と謳われるムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)を含む多くのアーティストと共演しました。(ムラトゥは、ビル・マーレイ(Bill Murray) 主演映画『ブロークン・フラワーズ』のサウンドトラックでも演奏しています。)

アメリカに到着して間もなく、テスファマリアムはマサチューセッツ州にあるバークリー音楽大学で学びました。作曲の学位を修めつつ、地元の人々から成る様々なグループとともに音楽家活動を続けました。その経験がテスファマリアムの音楽に多大なる影響を与え、数年後ついに彼は『My Life in Music』という、彼の半生を演奏で表現した待望のCDアルバムをまとめました。

テスファマリアムのCDは多くの点で他のCDとは一線を画しています。本作に比肩しうるエリトリア人のインストゥルメンタル・アルバムを探すのは困難です。それまでの作品は既存の楽曲を楽器の演奏でカバーするスタイルが主流であり、誰も彼のようにオリジナルの作曲を試みようとは思わなかったのです。

テスファマリアムのアルバムはそれまでの冗長なキーボードのアレンジとは異なり、彼自身のオリジナルの曲なのです。音楽でストーリーを語っているのです。彼はそのモダンで心地よいスタイルで、ジャズをエリトリアに伝えています。それは、簡素であり、決して派手なものではありません。彼はジャズと、キメと深みがあるエリトリアの民謡を融合させているのです。

このような特徴を備えた彼の新作CDは、おそらく後世のエリトリアの音楽家達に多大な影響を与え、新しい音楽のスタイルの示唆を与えたことでしょう。

エリトリアの音楽ファンは、クールジャズとエリトリアの音楽の単調な楽曲との共通点を見つけることが難しいと感じるかもしれません。それでもテスファマリアムは2つの音楽を融合させ、より魅力的なサウンドを作り出しているのです。このCDはエリトリアの人々だけではなく、様々な国の人が楽しめることでしょう。アメリカのリスナーにとっては遠く離れている国、エリトリアをより身近に感じることが出来るはずです。

私はジャズとは音楽コミュニケーションの中で最も深い手段のうちの1つであると言えるだろうと思います。そしてテスファマリアムの新作CDはエリトリア人を新たなジャズへと導いたのです。

テスファマリアムの新作『My Life in Music』のレコーディングはアメリカのミュージシャンたちと行われました。彼らは申し分のない程の基準値を上回る高いレベルの演奏をします。キーボードプレイヤーのグレン・ダグラス(Glenn Douglas)、ギタリストのアール・カーター(Earl Carter)、ベーシストのウォルター・コスビー(Walter Cosby)、そしてドラマーのジェフ・ニール(Jeff Neal)らによる完全なハーモニーは一瞬であなたを魅了することでしょう。

このCDの最初のトラック “Give Peace a Chance” は、テスファマリアムがテナーサックスでややアップテンポで上品な旋律を導き、彼の演奏のすぐ後ろでは、ダグラスのキーボードが彼を追うように、時には彼を追い越すように2つのメロディーが絡み合うように演奏されるという、エリトリアとエチオピアの間の状況を思い起こさせるような普遍的なメッセージを含んでいます。この1曲目を聞けば、このCDの中にどんな曲が収録されているか確信できるでしょう。

(ビニアム・テクレによるレビュー)
September, 2005.

Yètèsfa Tezeta Yètèsfa Tezeta
Tesfa-Maryam Kidane
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Heywèté Heywèté
Tesfa-Maryam Kidane
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Tezeta Tezeta
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